大崎テツアーノ写真展


「謝写酌軸」

2009.11.10 - 11.15
PM12:00 - PM7:00

例えば、モニター上に現れた文字化けのデタラメな文字の並びが偶然意味を持つ“言葉”になったりするように、何の作為も演出も無くたまたま目の前に現れた光景がドラマチックに見えて思わずシャッターを切りたくなる瞬間がある。

あるいはまた、朝や夕方電車に乗って外を眺めている時、遠くのビルの窓が一瞬だけ陽の光を反射させる事がある。たまたま条件が重なって目に届き、その瞬間に消えてしまう光。誰かが見せようとしたわけではない、ただ現れて消える無垢な光。そんな光を愛おしく感じる。

スナップ写真とは、そんな光を記録に残す作業に似ているかもしれない。

すべては偶然。偶然のたまもの。


*テーマ
特に撮りたいイメージやテーマがあるわけではなく、街を歩いている時にフト撮りたくなった瞬間を撮っています。写真を通じて自分が感じた事が伝わる事が楽しくて作品を発表しています。

*タイトル
以前使っていた携帯電話の画面に現れた文字化けです。あまりの字面の良さに「いつか初めて個展をする時はこのタイトルで行こう!」と思いました。

(作者より)


開催にあたって

「決定的瞬間」という言い回しがあります。テレビ番組などでは”衝撃映像”のような意味合いで使われますが、そもそもはフランスの写真家、アンリ・カルティエ=ブレッソンが1952年に出版した写真集のタイトルです。大崎さんの作品を見た人の脳裏には必ずその言葉が浮かぶはずです。

日常の光景に時おり姿をあらわす「あり得ない瞬間」をいち早く見抜く大崎さんの眼力は一級品です。普通の人ならカバンからカメラを探り出すあいだに消えてしまうようなシャッターチャンスも逃しません。大崎さんは「スナップショットのハンターである」といっても過言ではないでしょう。まさに「神業」という言葉がピッタリです。

これまでアビィでスナップ写真作品を発表し続けた大崎テツアーノさんが自身初となる個展を開催します。テーマはもちろん得意の「スナップ写真」です。

それは、ありふれた日常風景の中のありふれた人やモノたちが図らずして演じてしまった群像劇をとっさに察知する大崎さんの感性の鋭さなしには残せなかった光景ばかり。

そんな決定的瞬間を数々モノにしながらも、ユーモアにあふれた世界観であるのが大崎さんの作品の特長です。思わず感心したり、思わず唸ったり、思わず大笑いしたり、1枚1枚じっくり見たくなる写真展です。

みなさまのご高覧のほど、ぜひともよろしくお願い致します。


(吹雪大樹)

作者プロフィール
大崎テツアーノ・1967年千葉生まれ。

大阪美術専門学校美術工芸科卒業。同校在学中に写真を始める。その後全く個人的な活動に留まっていたが、2005年よりギャラリー・アビィやNADAR大阪などの企画展に発表を始め現在に至る。

(会場風景)